誰も守ってくれない

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加害者家族を守る映画

 映画の展開には?がつくことがいろいろありますが、社会派ドラマとして観るべき映画だ。

 兄が「小学生姉妹殺人事件」の犯人として捕る。警察が世間の非難から、妹・船村沙織(志田未来)と両親を、過剰に反応するマスコミやネットユーザーから守るというストーリー。

 この映画を観て、『「少年A」この子を生んで…』を思い出しました。神戸連続殺人事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗の母親が書いた手記です。酒鬼薔薇聖人が逮捕前後の現実が書かれていて、映画を観て、手記と比べて納得する場面もあれば、ツッコミたくなる場面もありますが、映画として割り切ろう。

 映画の冒頭、楽しい学園生活を送っている沙織に、重大事がおきたことが知らされるシーンが、音楽とともに写されている。普通に暮らしていた日常に、突然、不幸が襲うシーンだが、最後まで観ればここもツッコミどころである。

 兄が逮捕されることをかぎつけたマスコミは、沙織の家に殺到する。マスコミや世間から加害者家族を守るために、警察が動き出す。警察は、加害者の家族とバレないよう離婚して、母側の名字になることをすすめ、慣れた手はずで手続きをすすめます。このやり取りは、上記の手記にも書かれていたので、同じことが神戸の事件でも行われていた。

 家を離れて匿うために、刑事の勝浦(佐藤浩一)と三島(松田龍平)が沙織を車で連れ出しますが、この時に行われたカーチェイスは流石にやりすぎ。この映画の趣旨にここまでアクションシーンはいらないのでは。また、せっかく振り切ってホテルに入ったのに、すぐにマスコミにばれる。警察ドジすぎ。

 行く場所が亡くなった勝浦は、沙織を自宅に匿い、精神科医の令子(木村佳乃)も自宅に呼ぶ。沙織と礼子の初対面の時の礼子の対応も?重大事件を犯した犯人の妹に対して軽すぎる。

 家宅捜査で自宅に残っていた沙織の母親がトイレで自殺する。そのことを知った沙織は、警察のせいだと勝浦を罵倒する。立て続けに不幸が襲う沙織がかわいそう。

 映画で、警察が沙織の供述を執拗に取りたがる。兄を自供をさすために必要とのことだが、これだけの事件で中学生の妹の裏付けが取れなければ、逮捕できないなんてことはあり得ない。しかも容疑者が少年。

 神戸の事件の手記で、母親と兵庫県警のこんなやり取りが書かれていた。

 息子を逮捕しに来た警察に母が、「間違いじゃないですか?」というと、警察は「確かに冤罪はあります。しかしこの逮捕が間違っていたら兵庫県警はつぶれます。」(こんなニュアンス)それぐらい自信がないと、これぐらいの重大事件で少年を逮捕しない。

 新聞記者・梅本(佐々木蔵之介)も見事に嫌な記者を演じている。「家族は死んで償え」は言い過ぎだが、そう思う人は実社会にもいるだろう。

 後半は、ネットにも焦点を当てた映画になってくる。

 勝浦は沙織をペンションに連れていく。ペンションのオーナー夫婦・本庄圭介(柳葉敏郎)、久美子(石田ゆり子)は、昔、警察のミスで息子を暴漢に殺されている。いわゆる被害者家族である。被害者家族のペンションに加害者家族を連れていき匿うという設定は、映画ならではあるが、その後の圭介の感情の爆発など、このペンションでのストーリーは少し感動的な描写だ。

 匿ってもらっているペンションを沙織みずから、バラシてしまう。勝浦も困ればいいという動機らしいが、???さすがに気持ちが動揺している中学生でもそんなことはしないだろう。

  ペンションに沙織の彼氏、達郎(冨浦智嗣)が現れ、沙織を連れ出して逃げる。しかし達郎もネットの書き込みの犯人で、沙織を匿ったホテルの部屋で沙織を盗撮し、ネットに晒していた。騙される沙織も如何なものかと思ってしまう。

 勝浦が助け出すが、よく偶然、達郎を発見し、ホテルを発見できたものだ。ハショリすぎではなかろうか?

 助け出した沙織と勝浦が海岸で話し合うシーンがクライマックスだが、そこで沙織は、事件の当日、兄が血の付いた手を風呂場で洗っていたと告白する。つまり、兄が何か事件を起こしたことは想像できる。なのに、冒頭の音楽とともに学園生活を楽しみ、事件の知らせ驚く沙織は、どう考えてもおかしい。

 映画の詰めとしては甘い映画だが、犯罪加害者家族、被害者家族、記者の振る舞い、ネットの凶暴性などリアルな感じで見応えのある映画でした。

 

 

 

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