百田尚樹原作の出光興産の創始者、出光佐三(映画・国岡鐵造)の生きざまを描いた物語
国岡鐵造(岡田准一)が明治から戦後の激動期に、国岡商店(モデル・出光興産)を大会社に成長させる。ブラック企業がはびこる現代社会、社員の事、日本の未来を見据えた、見本にすべき経営者だ。
1912年(大正元年・鐵造27歳)、機械油の売込みが上手くいかず倒産の危機に立たされていた鐵造は、船を漕ぎ出し海上で軽油を売りさばく方法で立て直す。門司(福岡)を本拠地にする国岡商店は、門司の漁船にしか販売できない決まりがあるが、海の上なら関係ないと下関の漁船に販売する。下関の業者が反発してくるが、鐵造は全く相手にしない。すさまじい行動力。
商売が軌道に乗り始めていた鐵造は、兄、万亀男(光石研)より、ユキ(綾瀬はるか)を紹介され結婚する。
1945年終戦後。これまでの無茶な販売を嫌われ、石油配給統制会社(石統)から締め出しをくらい、石油の販売ができない。そこに国岡商店の販売網を見込まれてGHQよりラジオの修理を頼まれる。全くやったことのない仕事を鐵造は引き受ける。しかし銀行から融資を引き出せない藤本(元海軍・ピエール瀧)に「熱が足りない」と一括する。藤本と柏井(野間口徹)は、それに応え融資をもらい、ラジオの事業は立ち上がる。
戦地より、国岡商店の社員、東雲(吉岡秀隆)たちが帰国する。
石統の烏川(国村隼人)は石油の輸入をGHQに要請するが、海軍の埋蔵石油を使い切ってからだと断られる。烏川は、困難な海軍の石油の発掘を国岡商店に押し付ける。
石油の仕事ができると喜んだ東雲が中心になり取り組むが、ポンプも使えず、泥まみれの石油に困難を極めるが、何とか商品になるまでたどり着く。泥まみれで働く社員たちのもとに鐵造が訪れ、一緒に泥まみれになりながら作業を手伝う。経営者の鑑だ。
GHQの通訳をしていた武知(鈴木亮平)が国岡商店に入社する。石統は間もなく解禁される石油の輸入業者から国岡商店を締め出そうとGHQに画策するが、武知の働きにより回避される。GHQも国岡商店の働きぶりを認めていた。しかし、輸入解禁は日本だけでなくメジャー(アメリカ)との闘いになる。
1917年満州。鐵造は、長谷部(染谷将太)と満州にいた。満鉄に石油を売り込むために。鐵造は、極寒の地でも凍らないメジャーより優れた石油を開発するが、メジャーの圧力に負けて敗北する。
満州から帰るとユキが実家に帰っていた。子供ができないこと、仕事人間でかまってくれない鐵造に寂しさを感じていた。素晴らしい経営者でも、素晴らしい夫にはなれないものである。
1945年春。南方戦線の石油の配給を任せれていた長谷部が、日本から戦線に戻るときに飛行機が爆撃され戦死する。
石油の輸入の解禁後、順調に商売を続ける国岡商店にメジャーが提携話を持ち掛ける。しかし、自社株50%の譲渡と役員の送り込みを条件にしてくるメジャーに激高し、提携話を断る。その後メジャーの圧力がかかり、国岡商店はアメリカからの石油の輸入が止められていく。
倒産寸前に追い込まれた鐵造は、ここでも行動力を発揮する。自社保有のタンカー、日承丸をつかいイランから石油を輸入することを考える。当時のイランはイギリスと対立状態でイギリス海軍がイランを包囲し、イランからの石油の輸出を封じ込めていた。そのイランから石油を運びたすということは、イギリス海軍に撃沈される可能性が有るということだ。東雲(吉岡秀隆)は戦争で死んだ長谷部(染谷将太)のことを引合いに、イラン行きに反対するが、鐵造はの意志は変わらない。
船長の盛田(堤真一)は、鐵造にイランへの渡航を頼まれると、「店主(鐵造)に頼まれたら、どこでも行きますよ」と男気をみせる。船員たちは出発後にイラン行きを告げられ困惑するが、鐵造からの手紙を聞かされて、腹をくくる。
日承丸はイランで石油を積んで出発する。イランの海域は無事に通過するが、シンガポール沖でイギリス海軍に見つかってしまう。イギリス海軍から停船命令が告げられるが、盛田は「イギリスの介入は筋違いだ」と無視して突進する。イギリス海軍は小さな衝突はするが、追いかけてはこず、日承丸は見事に日本に帰国する。鐵造の決断力と、盛田と船員たちの勇気がなしえた帰還だ。国岡商店は復活し、その後の繁栄につながっていく。
1981年、鐵造96歳。川辺で療養中の鐵造のもとに若い女性(黒木華)が現れる。先日死んだ大叔母の遺品のファイルを持ってきた。彼女の大叔母は、鐵造のもとを去ったユキだった。ユキはその後も結婚せずに、国岡商店の切り抜きなどを取って暮らしていた。二人で撮った記念写真も大事にはさまれていた。鐵造は涙にくれる。
鐵造は、昔を思い出しながらこの世を去る。
出光佐三の凄まじい生きざまを、岡田准一が迫力満点で演じた素晴らしい映画でした。
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