坂の途中の家

育児をはじめる男性に観てほしいドラマ

 生後8ヵ月の乳児を、育児ノイローゼから浴槽に落とし、殺してしまうドラマ。

 「育児ノイローゼ」、「児童虐待」、育児経験のない人は、自分とは関係ないことと思っているだろう。この映画は、普通の人間が、特に目立って悪い環境ではないのに、少しの歯車の狂いから、児童虐待に落ちていく様子を、見事に描写している。育児中の家族、これから育児をはじめる家族に是非、観ていただき、育児の参考にできれば、と勧めたいドラマ。

 生後8ヵ月の娘を殺した水穂(水野美紀)の、裁判員裁判の補充裁判員を務めることになった里沙子(柴咲コウ)。里沙子も2才の娘を持つ母親である。

 水穂が派手で母親失格の女なのか、旦那の協力を得られず1人で子育てに奮闘する女なのか、裁判を行う中で、育児中の里沙子も心が疲弊していく。

 里沙子は旦那・陽一郎(田辺誠一)と文香の三人家族。文香は2才児のどこにでもいる駄々っ子。陽一郎も何処にでもいる普通の旦那。陽一郎の母(風吹ジュン)は文香を、とことん甘やかす。里沙子の母(高畑淳子)は、あまり協力的ではない。

 このドラマの最後の方で、里沙子は心を追い詰められ、文香の顔をクッションで押さえつけてしまう。たまたま家に来た児童福祉士が、止めに入らなければ、殺していたかもしれない。そこに至るまでに、陽一郎や義母が里沙子に、強い非難を浴びせたことは無かったし、非協力的な事もなかった。むしろ、平均以上の協力者ではないかと思う。それでいて、里沙子の心が病んでいくのが不自然ではなく、里沙子を可哀そうと思ってしまう。つまり、誰も悪くないのに、里沙子は文香を殺す一歩手前までいってしまったのだ。

 「おんぶして」、と駄々をこねる文香を、夜道に置き去りにするふりをして、隠れて見ていたら、たまたま陽一郎に見つかったこと。食べ物で遊ぶ文香にイラつき大声で起こると、大泣きされ、また陽一郎に見つかる。疲れ果て、電車から降りるとき、文香を置き去りするという失態を演じ、さらに心が憔悴していく。全てのことが裏目、裏目に向かい、マイナス思考に陥っていく。

 子供をちょっと置き去りにしてみたり、大声で怒ったりは誰でも経験あるだろう。普通の出来事である。陽一郎の行動も特別、大げさに攻めたりしていることは無い。しかし、取りようによってはモラハラとも取れる行動もある。そして育児ノイローゼに堕ちる。

 育児とはそういうものなのだろう。育児中、男性側は、女性はこれまで付き合ってきた同じ女性であっても、子供が産まれると、何倍も神経質になっていることを認識しなければならない。マイナス思考にもなる。先に子供を産んだご近所さん、女友達からの助言も、時にはマウントととらえるであろう。義母からの「ちょっと小さいね」、「しゃべるのが遅いね」、「ミルクのませてるの」これらの言葉を悪口ととらえる。そんな女性を見て、男性は、大丈夫か?と心配するが、心配されると、またイライラする。

 では、男性はどう接すれば良いかと考えても、答えはわかない。「心配しすぎだよ」と慰めても「本気で考えてない」と言い返されるだろう。

 褒めるのがベターでは、なかろうか。子供の良いところを見つけて褒める。女性のがんばっているところを褒める。義母(男性側の母親)の援助に対して、文句を言ってきても、言い返さない。ドラマの中で、陽一郎の父・里沙子の義父(光石研)が里沙子を褒める場面があるが、その時の里沙子の表情が一番明るかった。このドラマを見て女性の育児の苦労を少しでも理解し、よりそえるようになっていこう。

 

 

 

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