感動間違い無し ラーゲリーより愛を込めて

ネタバレ有り

 感動したい人にお勧めの映画。戦後のシベリア抑留を舞台に、山本幡男という実在した人物の実話の映画。是非、子供たちにも観てもらいたい、人生を考えさせられる映画。私は、感動の余り、映画を観た後、舞鶴の引揚記念館に行ってから、もう一度観た。引揚記念館には、当時の日誌や食器の展示物や、収容所の模型があり、収容生活の厳しさが伝わってくる。父親が収容生活を送っていたという、ガイドの女性の方がおられ、いろいろ話を聞くことができた。日本政府に、取り残された捕虜の人たちを「好きに扱ってくれたらいい」と見放されたことや、帰国後も、「赤」(共産主義)と言われ、差別を受けたことを、涙声で話されていました。

引揚記念館

 満州国で敗戦を迎え、妻・モジミ(北川景子)ら家族と別れ、ソ連のラーゲリ(収容所)で強制労働に耐えながら,ダモイ(帰国)の日を待ち続ける山本幡男(二宮和也)と仲間たちの物語。

 零下40度での強制労働、1日の食事が黒パン1個とお粥1杯、不衛生な環境で病気が蔓延し、未来が見えない収容生活。山本幡男は、歌を歌ったり、俳句を教えたり、仲間を励まして生きていく。

 スベルドロフスクの収容所(ソ連の東方)で収容生活を送っていた3年後に、ダモイ(帰国)の通達があり、貨車で西方に向かう。ところが、幡男ら一部の人たちが、ハバロフスクで強制的に降ろされ、新たなラーゲリに収容される。ダモイを信じ、貨車でナホトカ港の近くに行きながら、再び収容された人々の絶望感は、想像できない。ここで、幡男の先輩である原(安田顕)と出会うが、原が、幡男をソ連に売ったことを知り、ショックを受ける。しかし、幡男は、心を閉ざす原までも、励まして生きていく。

 厳しい収容生活のなかで、クロ(犬)を飼ったり、野球をすることを認めてもらったり、ささやかな楽しみを糧として生きていく。

 往復葉書が書けるようになり、モジミに幡男からの葉書が届く。幡男の生死がわからないまま、4人の子供を育てているモジミにとって、幡男の生存の知らせは、どんなに励みになったのだろう。

 逆に、葉書によって婚約者の死を知った相沢(桐谷健太)は、未来に絶望し、死を覚悟した行動をする。そんな彼を、幡男は生きるべきだと必死で説得する。

 だが、幡男は病に倒れる。収容所の中では満足な治療ができないと、大病院に移すようにソ連軍に訴えるが、聞き入れられない。そこで、戦場での卑怯な行為から、引け目を感じて生きている松田(松阪桃李)が、ハンガーストライキで、ソ連軍に訴える。止める仲間に対し、「山本さんのように生きるんだ」と話す姿は、名場面。仲間も参加することになり、訴えは聞き入れられる。

 しかし、幡男の病気は重く、帰国できないと判断した原は、幡男に遺書を書くことをすすめる。遺書は完成したが、文書の持ち出しは禁止されているため、原、相沢、松田、漁の最中にソ連に連行された新谷(中島健人)の4人が記憶して、伝えることを考える。

 幡男は死に、クロは収容所を去った。2年後、最後まで残された収容者たちに帰国の時が訪れる。同時に、舞鶴の引揚港に向かおうとするモジミのもとに幡男の死が知らされ、モジミは泣き崩れる。

 原達を乗せた引揚船が出港して、しばらくすると、収容所を離れていたクロが氷の海を走って、船に向かってくる。クロに気づいた相沢たちが、船を停め、クロをひきあげ、感動の再会となる。

 この映画を見た1度目は、この場面は感動の押し売りで、余計な創作かな、と思った。しかし、調べてみるとこの場面も実話で、船にひきあげられる実際の写真も残っており、本にもなっている。(「氷海のクロ」)実話と知って観た2度目は、この場面で涙がとまらなかった。

 

 いよいよモジミのもとに、原、松田、新谷、相沢が訪れ遺書を伝えていく。大好きな母を収容中に亡くした松田が、幡男の母あての遺書を伝えたり、子供たちに生き方の教訓を聞かせたり、この場面も涙なしでは観られない。相沢が「殊勲甲だ」のくだりで始まる、モジミへの遺書は感動ものだ。

 感動だけでなく、生き方も学ばされる映画だ。映画を見た後は、ネットで遺書の全文を読んでほしい。4人がかりとはいえ、簡単に記憶できる長さではない。また機会が有れば、舞鶴の引揚記念館も訪れてほしい。

 

 

 

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