浅田次郎原作 日輪の遺産

実話でないことが救いの、悲しい戦争映画

 映画は2011年、老夫婦(八名信夫、八千草薫)が戦争で大事な仲間を失ったことを振り返ることから始まる。

 昭和20年8月の終戦間際の日本。日本はポツダム宣言を受け入敗戦を決断する。占領される前に、フィリピンで奪った財産を隠し、アメリカ軍に奪われないよと軍部は画策する。

 その役割を任されるのが、エリート軍人の真柴少佐(堺雅人)、大蔵官僚の小泉中尉(福士誠治)、中国戦線帰りの望月曹長(中村獅童)と、20人の女学生たち。女子学生たちには、反撃のための新型砲弾を隠すと言いくるめていた。

 女子学生の中には、級長の久枝ひさえ(森迫永依)や、軍人の娘で病気がちなスーちゃん(土屋太鳳)らがいる。彼女らの先生は、特高とっこう(特別高等警察)に目をつけられている野口先生(ユースケ・サンタマリア)。彼女、彼らの存在がやがて悲劇を引き起こす。

よなよなの里

 順調に作業が進んでいるなかで真柴たちに軍令が下る。「8月15日までに作業を終了すること。玉音放送を全員に聞かせること。」そして「機密保持のために、野口先生と女学生全員を、同封の薬物で殺すこと」を命令される。この時の会話を、体調不良で隣の部屋で寝込んでいたスーちゃん(土屋太鳳)が聞いてしまう。(真柴たちは聞かれたとは思っていない)真柴は命令の撤回に奔走するが、軍幹部が自害したりで命令系統が機能しない。そのような命令は出ていないと判断した真柴は、女学生たちを無事に家に帰すことを決断する。

 8月15日。真柴らと女学生たちは玉音放送を聞き、終戦する。望月曹長と級長の久枝は、何故か風呂洗いをしていたため、玉音放送を聞いていない。真柴たちは、女学生たちを集め解散、帰宅を指示するが、スーちゃんが、「本当に帰っていいのですか?」と真柴らにきいてくる。小泉は「もちろん」と応える。

 真柴と小泉と野口先生が今後のことを話し合っていると、鞄から毒物の薬が無くなっていることに気づく。急いで女学生らのもとに駆け付けると、ごうの前に女学生たちの荷物が並べて置いている。軍人の娘のスーちゃんが、私らが生きていたら迷惑をかけると考え集団自決を図った。小泉が壕の中に入っていく。望月曹長と久枝も、騒ぎに気付き駆け寄ってくる。すると壕の中から銃声がきこえてくる。小泉がでてきて、苦しんでいるものを楽にさせたと言って壕から出てくる。任務を遂行するために久枝も殺そうとするが、望月曹長が体を張って止める。小泉は悲しみのあまり泣き崩れる。野口先生は、私は生徒を引率しないといけないといい、銃で自殺する。

 その後、小泉は日本を立て直すための提案書を財産の隠し場所と引き換えに交渉するが、聞き入れられない。小泉は19人の亡くなった女学生のことを話し、自身も拳銃で自殺する。

 マッカーサーは小泉の話をもとに財産の隠し場所に行くが、そこで女学生たちの壮絶な死を目のあたりにし、財産は無かったと壕を封鎖する。

 望月曹長は、久枝を1人にはできないと久枝と暮らすことになる。再開した真柴に、久枝を嫁にすると言い。真柴は望月曹長を立派な男だと称える。

 ちょっとストーリーにチグハグ感、無理やり感がなくもないが、終戦の際に現実に起きていたかもしれないと想像させられる悲しい映画でした。

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