護られなかった者たちへ

東日本大震災を舞台に生活保護に焦点を当てた社会派映画

ネタバレ有り

 映画の宣伝で、「連続餓死死体が発生」で始まるように、サスペンス映画でもあるが、作者が訴えたったのは、生活保護の問題だ。その問題に殺人事件が絡んでいく。映画は東日本大震災とその10年後(連続餓死事件がおきる)を中心に、時代が前後するので展開についていくのが難しい。

 主人公の利根(佐藤健)は被災し、避難所で出会った、遠島けい(倍書美津子)、カンちゃん(石井心咲)にだけ心を開く。利根はその後、福祉保険事務所への放火事件を起こし服役する人物である。

 震災から10年後、元福祉事務所の職員・三雲(永山絢斗)と城之内(緒方直人)が、拘束されたあげく餓死するという事件が発生する。そして、福祉事務所に恨みを持つ利根が犯人に浮かび上がる。

 というミステリーと並行して、生活保護の問題に焦点があてられる。子供を塾に行かせるために、働いていることを隠し、生活保護を受け取る人。元気なのに働けないと偽りつつ高級車を所有する人。生活保護をもらうことを国に迷惑をかけると断る人。生活保護に関しては、たびたび現実のニュースでも流れるよう、複雑な問題を含んでいる。厳しくすれば、生活に困窮する者も出てくるし、需給を甘くすれば、真面目に働く人が馬鹿を見る可能性がある。福祉事務所で働く人々の苦労が伺える。福祉事務所の職員・円山幹子(清原果耶)は不正受給者には厳しく、貰うべき人には申請をすすめ、使命を持って取り組んでいる。

 福祉保険事務所も限られた予算の中で、適正に支給しようとするが、断れる側からすれば、不適切な対応に感じるだろう。逆恨みに合うことも現実にでもあるのだろう。

 震災から数年後、生活に困窮する遠島けいに、利根とカンちゃんが生活保護を申請することをすすめ、受け取ることになるが、その後、けい自らが申請を取り下げ、餓死することになる。この時の福祉事務所の対応に憤慨し、利根は福祉事務所に放火する。確かに、三雲が申請の取り下げを進言したこと、三雲の上司・神崎(吉岡秀隆)の利根への態度は、必要以上に挑発した感があるが、役所と生活保護受給者、申請者の間で両方が納得する結論は出ないだろう。三雲もまた三雲なりの正義感から、受給者を増やさにいようにしているのだろう。

 利根が容疑者として拘束されるが、真犯人が福祉事務所の丸山幹子だと判明する。幹子=カンちゃんで、利根と同様、遠島けいの餓死に憤慨しての犯行ということだが、ここは突っ込みたい。果たして、遠島けいや、利根に優しく接していた幹子が、あの笑顔の女子高生が、男二人を監禁し餓死させるというのは、無理がある。ちなみに原作では、丸山は男性だ。しかし、丸山は女性のほうが物語として良い。お母さん変わりに慕っていた遠島けいが餓死させられたら、殺すなら餓死で殺すのも仕方ないかも。そもそも、この映画は不正受給に焦点を当てた映画であり、犯行手口や、犯人が誰かは大きな問題ではない。

 

 

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