八日目の蝉

 この映画は1993年に起きた日野OL不倫放火殺人事件、不倫相手の家を放火し、子供二人を焼死させた事件をもとにした映画です。実話は放火殺人、映画は誘拐と、罪もない子供たちが被害に遭った悲惨な事件です。

 映画は誘拐された恵里菜えりな(井上真央・誘拐犯の希和子は薫と名付ける)が、21才に成長した時代と、喜和子(永作博美)が恵里菜を誘拐した当時と並行して進んでいく。恵里菜は、4年間誘拐されていたことで、愛情をうまく表現できない産みの親の家族との関係が、上手くいっていない。生後4年間を他人に育てられた環境はなかなか変えれない。

 両親との関係が良くない大学生に成長した恵里菜は、家を出て一人暮らしをしている。恵里菜は、塾講師の岸田(劇団ひとり)と不倫し、妊娠する。恵里菜はそのことを、誘拐事件などの取材を申し込みに来ていたフリーライターの安藤千草(小池栄子)に相談する。

 野々宮希和子(永作博美)は、不倫相手の秋山丈博(田中哲司)の子供を妊娠するが、おろすように説得され、子供をおろす。それが原因で希和子は子供が産めない体になってしまう。一方で秋山の妻・恵津子(森口瑤子)は、妊娠する。妊娠した恵津子は、希和子のマンションへ行き、子どもをおろしたことなどを引き合いに、ひどい言葉で、希和子を罵倒する。

 薫(本名・恵里菜)を誘拐したものの子育てに悩んでいる希和子は、エンジェルホームという団体を頼っていく。しかし、エンジェルホームは宗教団体で、入信した信者と家族との間に揉め事を起こしている。警察の介入を恐れた逃亡の身の希和子は、薫を連れてエンジェルホームを脱出し、小豆島しょうどしまに向かう。

 恵里菜は妊娠したことで、妻と子供がいる岸田と別れることを決める。相談に乗っていた千草は、自分も昔、エンジェルホームにいて、恵里菜と一緒に生活していたと打ち明ける。2人はエンジェルホームの跡地を訪れた後、自分の過去を探しに、小豆島を訪れる。薫が3歳の時にエンジェルホームから抜け出した後、エンジェルホームの仲間、沢田久美(市川実和子)に紹介され、希和子とたどり着いた場所だった。

 恵里菜は、希和子と過ごした時を思い出す。希和子と薫は小豆島で、今までにない楽しい時間を過ごしていた。海、祭り、寺、学校、沢山の思い出が蘇る。小豆島での希和子と薫の生活は、二人の人生で一番楽しいひと時だったのではないでしょうか。

 小豆島の伝統の祭り、「虫送りにの祭り」にも参加して楽しんだ。しかしその時の写真が全国区の新聞に掲載されてしまう。希和子は見つかることを恐れ、島を離れることにするが、その前に写真館で写真を撮っていた。

 恵里菜は、小豆島のフェリー乗り場で帰りのフェリーを待つ間、昔、恵里菜(薫)が3才の時の希和子との、フェリー乗り場での出来事を思い出す。

 希和子と薫は島を脱出しようとフェリー乗り場に向かうが、すでに警察が待ち構えていた。希和子は薫を1人だけでフェリー乗り場に向かわせる。薫は警察官に保護され、希和子は拘束される。希和子は薫を保護した警察官に「まだご飯を食べていません。よろしくお願いします。」と叫ぶ。

 そのシーンを思い出した恵里菜は、写真館を訪れる。写真は5年前に希和子が持って行った。恵里菜は復元してもらった写真を見ながら、写真を撮る前に、希和子からかけられた愛情あふれる言葉を思い出し、涙があふれる。自分が産む子に「もうこの子がすきだ」と。

 生後すぐに誘拐され、物心ついた時からかけられてきた「育ての親の愛情」、血のつがりのある「産みの親の愛情」をテーマにした感動の映画でした。

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