東野圭吾の湯川秀樹と並ぶ人気シリーズ、加賀恭一郎。「新参者」、「麒麟の翼」が有名なとこだが、加賀恭一郎シリーズは結構古くからあり、「赤い指」は7作目、「新参者」は8作目、「麒麟の翼」は9作目だ。ただ、このシリーズは「赤い指」からが加賀恭一郎らしくなってくる。加賀恭一郎シリーズは、家族、人間関係をテーマに描かれることが多いが、「赤い指」では、加賀恭一郎の家族関係も詳しく画かれている。
前原昭夫(杉本哲太)、八重子(西田尚美)の息子で中学3年生の息子、直己(泉澤祐希)が、自分の言うことを聞かなかった小学校2年生の女の子、春日井優菜を自宅で殺してしまう。自首を勧める杉本哲太に対し、直己を溺愛する西田尚美は、隠蔽することを懇願する。しぶしぶ隠蔽を承諾する杉本哲太は、死体を公園に遺棄する。このとき西田尚美が発する「捨ててきて」というセリフには、身震いがする。死体はすぐに発見され、容疑は前原家に向けられる。追い込まれていく、杉本哲太、西田尚美は、犯人を認知症の杉本哲太の実母、政恵(佐々木すみ子)にしようと画策する。
前原家には認知症の佐々木すみ子がいて、杉本哲太の妹、春美(富田靖子)が車で通い、面倒を見ている。犯人に仕立てるために、本来はおとなしい佐々木すみ子を、凶暴な人に見せつけたり、息子が警察に取り調べを受けるときのために、予行演習をしてみたり、杉本哲太がつぶやく様に、こんな愚かの行為の時になって、家族が一致団結する。
いよいよ、佐々木すみ子が逮捕される時がくる。もちろん、佐々木すみ子が犯人でないと気づいている加賀恭一郎は、真犯人を指摘するのではなく、自ら過ちを認め、真実を語ってもらおうとする。拘置所での生活の具体的な話をし、本当にお母さんをそんなところへ入れて良いのかと、凄むシーンは見ものだ。杉本哲太は過ちを認め、息子が真犯人だと告白する。さらに、立ち会っていた妹、春美より、実は佐々木すみ子が認知症にはなってはいないと、衝撃の事実を知らせれる。携帯電も持っていて、春美と連絡を取り合い、過ちに気づてもらおうと、口紅を利用してアピールしていたことも知らされる。加賀恭一郎も早くから見抜いていた。同居してからの息子夫婦の扱いに嫌気をさし、認知症のふりをしていたというのだ。
これは、東野圭吾がときどき犯す、無茶ぶりだ。認知症になったふりをして生活し続けるという設定は、さすがに無理がある。ただ、このドラマではこの設定を受け入れよう。
ギリギリのところで人間の心を取り戻した杉本哲太に安堵した。
並行して、加賀恭一郎と父親(山崎努)の物語も進められるが、親不孝にみえていた加賀恭一郎が、実は親思いの息子だったことにも、ほっこりした。
観終わってから、もう一度、佐々木すみ子が認知症のふりをしているという観点で、ドラマを観てみると、違った景色が観えてもう一度楽しめる。
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