殺人の加害者であっても、息子の生を望むのか?
加害者(家族)となるぐらいなら、被害者として息子の死を望むのか?
自分がその立場にたたされたら、どちらを望むだろうか?と考えさせられる、サスペンスよりもヒューマンドラマの映画。
物語の進め方もうまく、「いったいどっちなんだ」ど、結果が楽しみな面ではサスペンスだが、それぞれの立場のでの描写がとても生々しく、心に響く面ではヒューマンドラマだ。
石川一登(堤真一)、貴代美(石田ゆり子)、規士(岡田健史)、雅(清原果倻)の4人家族に事件が起きる。
長男・規士は、怪我でサッカーをやめてから、不規則な生活になり、部屋でナイフ(切り込み)が発見されたり、顏に痣をつくったり、「やらなきゃ、こっちがやられる」と話している事を、妹・雅に聞かれるなど、面倒事に巻き込まれてる気配が感じられる。
ある日、規士が朝になっても帰宅しない。朝帰りもたまにあるので、そこまで心配はしてなかつたが、夕方になっても帰らず、心配が増していく。夜になり、一家が住む町で高校生ぐらいの男子が、暴行を受けて殺され、高校生らしき人が2人逃げていったとのニュースが流れ、不安をつのらせる。
翌朝、殺された人の身元が新聞に載ると、雅が規士の友達じゃないかと、両親に話す。
やがて警察が訪れ、規士が殺された高校生とは友人で、事件に関係している可能性が有ると聞かされる。
更に週刊誌の記者が現れ、この事件には、死んだ高校生の他に後3人が関わっている、2人が逃げて、もう1人が殺されている可能性がある事を伝える。
事件は、少しずつ詳細が分かり始める。事件の原因に、規士がサッカーで怪我をしたのが、先輩による故意のもの、その先輩が復讐にあい怪我をした事だと分かっていく。
そして、現在行方不明の3人のうち、1人は被害者として殺されていること、2人は加害者として逃げている事がわかっていく。
つまり、規士は殺された被害者か、ナイフで滅多刺しにした殺人の加害者か、どちらかになる。
ここからの人間描写が見応えがある。母親・貴代美は、規士は殺人犯でも生きていて欲しいと望む。父親・一登は、規士は殺人なんて出来ない心の優しい子で有る事を望み、殺されている被害者であることを望む。妹・雅は、規士が加害者で有れば、自分の将来影響するため、被害者であることを望む。自分がこの立場に立ったら、いったいどちらを望むだろうか?
この作品の優れたとこは、物語が進んでも、規士が被害者か加害者が全くヒントを与えずに進んで行くところ。それでいて飽きさせない。いったいどっちなんだ、判明したあと市川家は、どうなっていくのかと興味が尽きない。
そして事実が判明してからの人間描写も素晴らしい。
是非、結末を知らずに観て欲しい映画で有る。
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