東野圭吾ドラマ  片想い

中谷美紀が性同一性障害の女性を演じるサスペンスドラマ

ネタバレ有り

 元帝都大アメリカンフットボールメンバーがドラマを繰り広げる。毎年行われる飲み会の帰り、西脇哲朗(桐谷健太)と須貝誠(和田正人)の下に、元マネージャーの日浦美月(中谷美紀)が現れ、「人を殺した」、「神崎ミツルと名乗り、男として生きている」と、衝撃の告白を行う。性同一性障害の役に中谷美紀は、はまり役では。

 元アメフトのメンバーがそれぞれの立場で、ストーリーを複雑に展開させていく。哲朗の妻は、元マネージャーの西脇理沙子(国仲涼子)で、子どもがいないことなどを理由に夫婦関係はうまくいってない(倦怠期?)。後日、理沙子に家を出行かれると哲朗は大泣きするということは、哲朗は理沙子をまだ好きなのかも(片想い)。美月は男として理沙子のことが好きだ(片想い)。理沙子は、美月が人を殺した理由が、同僚のホステスをストーカーから守るため、また、美月が男として生きているということで、逃げ切れると考え、美月を匿う決断をする。哲朗はしぶしぶし従うが、子どものいる須貝は、この件には関わらないと、距離をとる。美月の大学時代の元カレで、今は既婚者で病気の中尾(鈴木浩介)も現れ、美月のことがまだ好きな中尾は、美月を守ろうとする(片想い)。さらに、こちらも元アメフト部の新聞記者の早田(大谷亮平)も現れるが、立ち位置は味方でも敵でも無く、真実を求めて記事にする、というスタンス。

 このドラマは性同一性障害、トランスジェンダー、戸籍の移動など最近の社会問題が様々出てくるが、本当の女性でありながらホルモンの関係で、女性選手として試合に出れない選手も登場する(男性に生まれて女性に性別変更したわけではない)。オリンピックでもそのような選手がいたことを思いだいた。原作が2001年に書かれたものだが、2023年現在でもこの問題は進んでいないような気がする。

 美月は哲朗たちに迷惑をかけたくないので、失踪するが、やがて見つかりストーカー殺しの犯人が本当は中尾だと告白する。このドラマの中尾の立ち回りは、素晴らしい。中尾はガンが再発し、命がの残り少ないことを自覚している。美月を助けるために人殺しをした中尾は、自分の家族、自分の娘を人殺しの家族にしたくないために、離婚を切り出すが、妻(酒井美紀)に離婚しても、人殺しの娘には変わりはないと諭される。確かに、離婚しても血の繋がりの無い妻はともかく、子どもは影響なしとは、いかないだろう。自分に人殺しの血が通っていると知るとどれだけ苦しむだろう。世間の目も厳しいだろう。最近見た映画「ある男」のように、戸籍交換したくなるかもしれない。

 中尾は、人殺しの子になんかならない、という。

 犯人が逃走に使っているストーカーの車が発見されると、警察は犯人が来るのを待ち伏せる。中尾は車に乗り込み逃走するが、焼身自殺する。完全に灰になった遺体はもはや男か女かすらわからないだろう。中尾は自分の戸籍を美月に譲り、中尾として男として生かしていく。ストーカーを殺した犯人は自殺したので、生きている中尾ではないことになる。

 家族を人殺しの家族にすることなく、美月を男として生かすことに成功した中尾は、片想いを全うでいたのでは?

 人それぞれいろいろな観点で楽しめるドラマではないかと思う。

 

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