吉田修一原作 さよなら渓谷

 吉田修一らしく、少し理解が難しい男と女の愛情を描いた少しもやもやする映画

 影のある尾崎俊介(大西信満)・かなこ(真木よう子)夫婦(籍はいれていない)の隣に住む立花里美(薬袋いづみ)が、息子を殺した疑いで警察に逮捕される。里美は、取り調べで隣の旦那の俊介と関係を持っていたと供述する。かなこも警察に同様の証言をしたことで、俊介は拘留される。

 記者の渡辺一彦(大森南朋)が、里美の事件の取材の中で俊介と出会い、俊介が有能な野球選手でありながら大学を中退していたことを突き止める。俊介は学生時代に、部活仲間4人と集団レイプ事件を犯した罪で大学を中退していた。

 渡辺の部下の小林杏奈(鈴木杏)は、被害女性のその後を調べるが、レイプされたことが知られることで婚約を破談になったり、結婚相手から暴力を受けたり不幸の連鎖が続いている過去をしる。その後、自殺未遂を行ったうえ、現在は行方不明になっている。渡辺は取材を続けるうちに、「尾崎かなこ」こそが、レイプの被害者、本名、水谷夏美だということにたどり着く。つまりレイプ犯と被害者が一緒に、夫婦のように暮らしている。「かなこ」という名前は、レイプ事件の時に夏美を見捨てて逃げた、友達の名前を語っている。

 俊介は拘置所の中で、学生時代のレイプ事件とその後を回想する。

 俊介は大学を退学し就職したのちに、一緒にレイプをした野球部の後輩から夏美の居場所を聞き出す。旦那の暴力や自殺未遂で入院している夏美と出会い、高校時代にレイプされたことを告白される。ここで犯人が自分だと俊介は言ったのだろう。(描写は無い)

 俊介は「なんでもするから」と夏美に手紙を送り続ける。夏美は電話で俊介をよびだし、泣きながらなじりつける。逃避行のような旅を続け、民宿に泊まったり食事をしたり2人はうちどけあっていく。すごく侘しい情景が続いていく。

 二人は一緒に暮らしはじめるが、幸せになるためではなく、「2人で一緒に不幸になるため」に2人は結び付く。

 俊介は警察からの容疑がはれ釈放され、2人はしみじみとした暮らしを再開する。

 しかし、夏美は手紙を置いて出て行ってしまう。理由が「幸せになりそう」だったから。俊介は必ず探し出すと、渡辺に話す。最後に渡辺は、俊介に尋ねる。あの時に戻れるなら「事件を起こさない人生」と「事件が有って、かなこと出会えた人生」どちらをえらぶのか?

 

 

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