伊坂幸太郎のどんでん返しと感動映画 アヒルと鴨のコインロッカー

切なく悲しい、どんでん返し映画 ボブ・ディランの「風に吹かれて」が心地よく流れます

ネタバレ有り

 椎名しいな(濱田岳)は大学への進学で、仙台にやってきた。椎名が住むアパートは隣にブータン人のドルジ(田村圭生)、反対の隣に河崎(瑛太)が住んでいる。ドルジは恋人だったペットショップの店員の琴美(関めぐみ)に死なれて、塞ぎこんでいる。琴美はドルジの前に河崎と付き合っていた。

 河崎と仲良くなった椎名は、ペットショップの店長、麗子(大塚寧々)は信用するなと忠告を受ける。河崎はドルジと琴美の馴れ初めを話し、琴美を通じて河崎とドルジも仲良くなっていた。椎名は成り行きで、河崎が本屋に広辞苑を盗みに行くのを、手伝わされることになる。

 椎名は大学で麗子を見かける。麗子はブータン人を探しに来ていた。椎名は麗子から2年前の河崎、ドルジ、琴美のことや、2年前に起きていたペット殺しの話を聞かされる。そして河崎君には気を付けろ、河崎君の言うことは信用するなと、忠告される。椎名が河崎を観察していると、河崎は夜な夜な出かけるという変な行動に気づく。

 椎名はペットショップに麗子を訪ね河崎の事を聞き、河崎がHIVに感染してることを聞かされる。

 椎名は河崎にもペット殺しのことを聞かされる。ブータン人と琴美が、3人組がペット殺しを行っている現場に遭遇したこと、3人組から襲われそうになり、琴美が3人組に警察に言ってやると言い放って逃げたことを聞く。

 夜な夜な出かける河崎を、椎名は麗子の車で後をつける。麗子からブータン人、琴美、河崎の物語を聞かされる。さらにペット殺しのその後のこと、現場に落とした琴美の通学定期から住所がばれ、犯人たちに襲われた話を聞。

 朝になり2人は、河崎が夜に行ったであろう場所に行くと、一人の男が縄で縛られ木にくくりつけられていた。

 麗子は、「河崎君はもうこの世には居ない、ブータン人に聞いてみて」と話す。

 アパートに戻った椎名はブータン人に確認すると、ブータン人と思っていた男は山形出身の訛りのきつい男だった。河崎と思っていた男(瑛太)がブータン人、ドルジだった。

 ドルジ(瑛太)は大学入学で来日し、日本語が得意ではなかった。琴美と付き合い河崎(松田龍平)とも知り合い日本語を教えてもらう。ドルジと琴美は同棲を始める。そしてペット殺しと遭遇する。後日、3人組に襲われた琴美はボディーガードを申し出た河崎に助けられる。犯人たちからのしつこい脅迫電話に怒った琴美は、犯人を見つけ出し警察に突き出そうと考える。ゲームセンターで犯人たちを見つけた琴美とドルジは警察に連絡するが、犯人に逃げられそうになる。琴美が犯人の車の前に立ちはだかり制止しよとするが、はねられて死んでしまう。犯人の車はすぐに事故を起こし、犯人の2人が死ぬ。

 琴美を失ったドルジと河崎は、犯人の残りの1人、江尻への復讐を決意する。しかし江尻が働いている本屋に復讐に向かう途中、河崎が病で倒れ病院に運ばれる。

 2年後、江尻への復讐を手伝ってくれる人を探していたドルジは椎名と巡り合う。広辞苑を盗むと言って本屋に向かったドルジは、椎名に裏口の見張りをさせている間に江尻を襲っていた。江尻を生きたまま木にくくりつけ鳥葬ちょうそう(鳥に死体を食べさせる事。チベットなどで行われている)を行おうとしていた。本屋強盗の真相は、広辞苑を盗むことではなく、江尻に復讐することだった。ドルジはすぐに死なせないようにするため、夜にご飯を与えに出かけていた。

 椎名は父親の見舞いのために帰省することになり、麗子とドルジが駅まで送っていく。麗子はドルジに自首を勧め、ドルジも納得する。

 ドルジは駅で椎名を見送った後、車に轢かれそうな犬を助けようとして飛び出し、椎名が牛タン弁当を食べながら寝落ちする場面で映画は終わる。

 どんでん返し映画にありがちな、「どんでん返しのためだけのストーリー」ではなく、ストーリー自体も楽しめる切ないどんでん返し映画です。

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