刑務所から出所し、ヤクザから足を洗った男の生き様
この映画は、実在するモデルを佐木隆三が「身分帳」という小説に書いたものをもとにしています。
刑務所から出てきた元ヤクザの三上正夫(役所広司)は、身元引受人の弁護士、庄司(橋爪功)のもと、社会復帰を目指していく。
しかし、殺人を犯した元ヤクザに対する世間の風当たりは厳しかった。就職先を探すが、前科者と分かれば、断られる。就職するために、失効した免許を取ろうとするが、就職できず経済的に教習所に通えないという悪循環。
スーパーで買い物をしていると、三上の素性を知っているスーパーの店長、松本(六角精児)に万引きを疑われる。松本は間違いを認め、同郷の三上の世話をするようになる。
三上の更生する姿を本にしたい津野田(仲野大河)と、母親の居場所を探したい三上の思惑が一致し、津野田の取材を受けることになる。松本は、ネタにされてるだけではないかと心配する。
三上は正直で正義感の強い一面を持ち合わせている。津野田らと焼肉を食べた帰りに、チンピラに絡まれているサラリーマンを壮絶な格闘のうえ助け出す。この時の三上は出所後、一番充実した表情を見せていた。
東京での生活が厳しい三上は、昔お世話になった九州の暴力団の組長(白龍)を頼り九州にわたる。しかし現代社会では、ヤクザで生きていくことも厳しいと感じた三上は、東京に戻る。
三上はケースワーカー(北村有起哉)の紹介で老人介護施設で働くことになる。
身元引受人の庄司(橋爪功)の家で就職祝いが行われた際、庄司の妻が三上に生き方を諭していく。「私たちはいい加減にいきている」と。全うすぎる三上に楽に生きるように諭していく。
就職先の施設で、障害をもった介護士、阿部と仲良くなる。その介護士は障害があることで、他の介護士に虐められている。三上はその現場を見かけるが、止めに入らず我慢する。
更に、食堂で介護士仲間が、阿部を馬鹿にする話題で盛り上げっているのを聞いても我慢する。三上の生き方に反するが、生きていくために我慢する。
三上は後日、元妻(安田成美)と会うことになるが、病気の発作で1人寂しくアパートで死んでいく。
正義感が強く不器用にしか生きられない男の寂しい人生でした。
いい加減に生きた方が楽な人生を送れるという、現代の寂しい社会を映した映画でした。
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