「ミッシング」のみどころ
1・石原さとみの演技
2・行方不明になった子供をもつ母親の気持ち
3・SNSで誹謗中傷する現代社会の問題点
「ミッシング」は、女優として向上したいと考えた石原さとみが、吉田恵輔監督(「ヒメノア~ル」「空白」等)に頼み込んで出演が実現した映画です。「ミッシング」は実際に起きた子供行方不明事件と、それをもとに起きたSNSでの誹謗中傷事件を題材にしていると言われています。子供の行方不明は想像以上に多く、2022年に起きた9歳以下の子供の行方不明は約1,000人もいるそうです。
静岡県沼津市に住む、森下沙緒里(石原さとみ)、豊(青木崇高)夫婦の娘・美羽が失踪して3か月が過ぎた。テレビの報道が少なくなったが、地元のテレビ局の砂田(中村倫也)だけが、沙織里に親身になって報道を続けている。
しかし、失踪当日に沙織里がライブに行っていたこと、美羽を預けていた沙織里の弟・圭吾(森勇作)が、公園で遊んだ後に美羽を沙織里の家まで送り届けなかったことで、家族がSNSで誹謗中傷にさらされるようになる。沙織はSNSの投稿を見るたびに神経過敏に陥っていくが、有力な情報があるかもしれないと、見ることをやめれない。夫の豊はそんな沙織里が心配になっていく。
沙織里の携帯に、愛知県蒲郡市で美羽を見かけたというメールがはいる。夫・豊は冷静に信憑性を疑うが、沙織里は藁にもすがる思いで蒲郡に駆けつける。こんな偽メールを信じたり、ホテルで他の子を美羽と見間違うほど、子供を失った母親は追いつめられていくのだろう。
テレビ局の砂田は、親身に沙織里達のことを思うが、テレビ局の上司が視聴率優先で放送しようとすることに憤りを感じ始める。
弟・圭吾もSNSの誹謗中傷により苦しめられる。更に、当日の行動の証言に嘘が発覚し、さらに犯人ではないかと疑いが増していく。
「ミッシング」の見どころは沙織里と他の人との、「美羽を思う温度差」の違い。夫・豊も美羽への思いは十分にあるが、冷静な対応に沙織里は不満を持つ。沙織里は、同じく美羽を心配する母親(美保純)にも当たったり、報道に不満を持つと砂田にあたることも有る。
石原さとみが、弟・圭吾が取材に非協力的な態度をとったときの狂気的な演技や、美羽が保護されたという偽電話を信じ、警察署に駆けつけた時の感情の崩壊の演技は、見応え満点。
現代社会の息苦しさを表現した映画でもある。一部を切り取られ誹謗中傷される現代社会。SNSの投稿には細心の注意を払わなければいけない。一方、映画でもあるように誹謗中傷したものが特定される時代にもなってきた。SNSの最大の欠点が克服されて来ているのは良いことだ。
映画の終盤は、2年後に沼津市で別の子が行方不明になるなどの動きがあるが、前半、中盤までよりはほのぼのとした感じで終わっていきます。
「ミッシング」はストーリー自体に意外性は少ないが、石原さとみの演技にくぎづけになる映画です。
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